1. 試験概要
(1) 試験実施機関
国士舘大学 理工学部
(2) 試験名称
あと施工アンカー引張試験
(3) 試験体
製品名:スピードアンカー
種 類:はさみ固定式あと施工アンカー
製造者:株式会社野村スプリング
(4) 試験母材
製品名:タイガーボード QM-9828(9.5mm 厚)及び NM-8619(12.5mm 厚)
種 類:せっこうボード(JIS A 6901 準拠)
(5) 試験方法
加力装置:電動計測スタンド
測定装置:デジタルフォースゲージ
試験項目:引張試験
*母材に取付けられたあと施工アンカーを加力装置にセットし、引張荷重を加えた時の最大試験力を測定する。
加力方法:1mm/分以内とする変位制御
2. 試験結果
母材 種類 | 番号 | 最大荷重(N) | 最大変位(mm) | 破壊形態 |
9.5mm | 1 | 352 | 2.542 | 母材破壊 |
2 | 312 | 2.129 | 母材破壊 | |
3 | 367 | 2.952 | 母材破壊 | |
平 均 | 344 | 2.541 | ー | |
12.5mm | 1 | 376 | 2.498 | 母材破壊 |
2 | 341 | 1.690 | 母材破壊 | |
3 | 365 | 1.903 | 母材破壊 | |
平 均 | 361 | 2.030 | ー |
※
本報告の試験結果はその数値を保証するものではありません。
※
30㎏までの耐久可能ですが、安全性の観点から20㎏までの重量物を推奨します。
3.試験結果の概況
引張試験の結果、いずれの試験体も最大荷重は300N(およそ30kg)を超え、破壊形態は母材(せっこうボード)の破断(写真1,写真2)によるものであり、スピードアンカーに曲がりなどの顕著な損傷は見られなかった。
写真1
写真2
また、図1は引張試験における試験体ごとの荷重と変位の関係である。
試験の結果、スピードアンカーに損傷がなく、せっこうボードが損傷していることから、荷重と変位の関係はせっこうボードの性能が支配的であると考えられる。
図1より、荷重ー変位曲線はいずれの試験体もある一定の荷重までは線形(弾性)の性状を示し、その後は緩やかな曲線で進行し、最大荷重への到達後はほとんど変形することなく脆性的に破壊している。ここからも、最大荷重についてはせっこうボードの性能が支配的であることが伺える。
また、母材の違いに着目すると、強度は12.5mmが高く、変形性能は9.5mmが高い傾向にある。この9.5mmの高い変形性能が、12.5mmと大きく変わらない最大荷重を示す要因になっていると考えられる。
そして、最も注目すべきは荷重ー変位曲線の線形(弾性)部分である。
一般消費者がスピードアンカーを使用する際は、安全性の観点から荷重が弾性の範囲で使用することが推奨される。
9.5mmも12.5mmも最大荷重は大きくは変わらず、いずれも300N(およそ30kg)を超えているが、弾性の範囲が、12.5mmの場合は概ね300N程度であり、9.5mmの場合は200Nから250N程度となっている。
天井材として使用されるせっこうボードには9.5mm厚が少なくないことから、今回の試験では、スピードアンカーの実用上の最大強度は20kg程度と考えれる。
図1
4.まとめ
(1)
母材がせっこうボード9.5mm厚または12.5mm厚1枚張の場合、破壊形態はせっこうボードの破壊となることが予想される。よって、最大荷重の決定要因はせっこうボードの耐力が支配的となる。
(2)
せっこうボードの強度は湿気に大きく影響を受けることから、浴室の脱衣所などの水回りで使用する際には注意が必要になると思われる。
(3)
今回の試験ではせっこうボードの厚さにかかわらず、最大荷重は300N(およそ30kg)を超えたが、一般消費者の安全性を考えると弾性荷重の範囲内で使用するのが好ましい。当該製品の場合、実用上の最大強度は200N(およそ20kg)程度と考えられる。
以 上